一話終了後。
荷物をまとめて寮に運び込んだ近江、端末に連絡。
『あんたの歓迎会だって。今度やるから来なさい』
警護の関係で連絡先を交換しておいた天野からのぶっきらぼうなメッセージ。
行くべきだと思いつつ、
食べられるものも食べられない身体で行っていいのかと迷う中、当日。
ぱん、ぱん。
と部屋に入るとクラッカー。
「ようこそ!永山隊へ!」
「正義は君の加入を歓迎する!!」
用意された食事――ナッツ、羊羹、和三盆、チョコフォンデュ。
どれも比較的つらさを感じずに摂ることが出来るもの。
永山――穏やかに微笑んで迎えている。
天野――一足先に須磨こだわりの一杯を両手で包み、啜っている。
それと知らない少女が一人。天野のすぐ傍に寄り添うように座っている。
『昨日付で、UGNでは正式に、君の我々の隊への編入が決定した。
これから、僕たちと君はチームとして一緒に戦っていくことになる。
そのために……そして、君自身を危険から守るために、
伝えなければいけないことは沢山ある。……んだけど』須磨さんを見る。
「その前に、まずは親睦。お互いの人柄を知って打ち解けることも大事、ってことでね」
「熱したチョコレートを塗して食べるとはなかなか熱血!一味を投入しても構わんだろうか!?」
「あり得ないから。味覚崩壊は自分のとこに配膳されたものだけにしときなさいよ」
「近江くん、食べられそうなものある?」
「はい……これとか」和三盆。
「よかった。この間の食べ方からして、まだいける方なんじゃないかーって思ったんだよね。
お茶も大丈夫?」
「はい」
「よし!じゃあ私厳選の茶葉で入れて進ぜよう。ちょっと待っててね」
がやがやわいわいと活気の絶えない中で、少しずつ会話を重ねていく。
面識のなかった少女とも。
「……」じろり。
初対面でじとっとした目で見つめてくる少女に言葉を詰まらせる近江。
「ファーちゃんは初対面なんだっけね。ほら、自己紹介しないと」
「……ざこにいう筋合いない」
「(雑魚)」
「さてはまた美津に何か吹き込まれたなー?
確かに近江くんは一般人上がりだけど、もう仲間なんだから。
ちゃんと自分から挨拶しなさい、先輩でしょ?」
「……」む、先輩。
「……ファーレンハイト」
「この前の事件の時は調整に出ててね、ちょっと特別な子なの。
この子も、ウチの立派な一員」
「せんぱい」うやまえ、という顔。
「近江有」「です」
よろしい、という顔。
「わたし、ミヅと相棒」
「……?」
「前回美津が近江くんと一緒に行動してたから、それでやきもち焼いてるんだって」
「わたしが相棒」ずいっ。
「う、うん」
「(すっ」着席。分かったならいいという顔。
他の仲間とも。
「君!正義をどう思うかね!?爆発の炎は正義か!?悪か!?」
「いつまでも付き合ってないで、冷める前に飲みなさいよそれ。葵のやつは淹れ立てが一番美味しいんだから」
『生活はどうだい?一人暮らしに近いことは、元々ある程度していたようだけど』
生活は大丈夫。食べやすいものが何かも分かってきた。
栄養バランスも大丈夫。須磨さんから相性が良さそうなものも教えてもらった。
永山さんと話をしていると、不思議と落ち着く。
只野さんは、ちょっと勢いがすごいけど、たぶんいい人だ。
天野は学校の時と変わらなくて、つっけんどん。
でも、それは裏を返せば飾らずに付き合ってくれてるってことだ。
ファーレンハイト……長いからファー、でいいらしい……彼女も、
口数は少ないけれど、裏表のない感じがする。
須磨さんはずっと笑っている。俺と似た境遇なのに、この輪の中で元気に、
むしろ他の人を巻き込むくらいの勢いで場を楽しんでいる。
最後の方では自分も少し笑顔になれた。
飾ったわけではなく、ただ単純に。
自分はこれからここで、この人たちと一緒に日々を生きていくのだ。
終わった生活から離れて、宙を漂っていた自分が、
新しい生活、新しい日常に繋ぎとめられる思いがした。
近江、以下のロイスを取得。
永山:○信頼/嫉妬
正義:○好意/食傷
天野:○連帯感/隔意
ファー:○連帯感/隔意
須磨:○親近感/劣等感