and……
「えー、ひっどーい!私だけないじゃん!ひっどい!」
なにやら、公園のベンチでスマホ片手に女性が憤っている。バックパッカーだろうか?横にかなり大きいバックを置いている。
「こういうのがあるのはさておき?何で私だけ名前ないのさー。そりゃそうなるだろうけど。」
「こっそり私の名前書き込めるかな?……よっしゃいける!やったれやったれ!」
そのままスマホからそこに自らの名前を入れていく
「ごすずん。」
太郎
「どこ。」
因子にあてられて覚醒したアニマルオーヴァード。
「ぼく、おなかすいた。」
ご主人を待っている。
「たべたいよ。あの、おいしい、おにく。」
そのおいしいおにくが自らのご主人だったものであると知らず、ずっとずっと、一軒家で待っている。
きっとそのまま待ちぼうけて飢え死に後にジャーム化し、家に入った相手を食い殺す鎧の化け犬になる。
ステータス的には上下環境のキュマノイ新規作成コンスト。
両手剣×2相当の牙+爪で殴りかかってくる。
でもそもそも戦うことを知らない。
しってることは、遊ぶことと食べることだけ。
「もうごすずん、いない?なんで?」
「ごすずんみたいなヒトって、ぼくたちわんこより、ずっとながくいきるんでしょ?」
わからないとでも言いたげに、小首をかしげる。
そうして、餓死するまで待ちぼうけるシーンばかり無為に永遠と続けて2d10ずつどんどん穢れていって、事情を知ってるPL君の心は折れてるけど、知らない太郎君は永遠と待ち続けている。
自分の愛犬を軽率に初ダブクロにぶちこんでしまって、しかも堕ちさせてしまった、かわいそうな愛犬家のダブクロ初心者。
太郎くんと同じ世界にはもう一人もいない、彼の唯一の理解者である。
「待ってくれ!?こっちの世界の俺がいたら、太郎がこんなことにはならねぇはずだ!?」
「……あぁ、そうか。こっちの世界の俺は、太郎に喰われちまったんだな。」
「だから、だから、太郎は化け物になっちまったんだ。」
「……うちの、太郎を。休ませてやって、くれないか?」
今回のGMを務める彼の目には、大粒の涙がこぼれていた。